あの日私は咄嗟に嘘をついた

 

百合子の人生最大の関心は、視聴率だった。

家に帰ってきた百合子は、すぐにノートパソコンを開き、
検索サイトから「リリーナイト 視聴率」と入力してエンターキーを押した。
画面に表示された昨日の視聴率を見て百合子は頭を抱えた。

(・・・また下がっている・・・)

百合子は「ああーっ!」と声をあげて机に突っ伏した。
これで2回連続の最低視聴率の更新だった。

(・・・もうどうしたらいいのかわかんないよ・・・)

百合子は机に伏したまま左手首につけていた白い腕輪を眺めていた。


・・・


それは百合子が就活中の出来事だった。

特にやりたい仕事もなく、就職活動にも熱が入らなかった百合子だったが、
ある登録サイトから面接のオファーメールが届いていた。
メールを開封すると、そこには「株式会社 英雄創造社」という社名が書かれていて、
どうやら見習いヒーローの緊急募集を行っているという内容だった。

百合子は小さい頃から兄の影響で特撮ヒーローが好きだった。

「正義」という言葉が好きで、弱者を助けて平和を守るそのヒーロー達に百合子は憧れを抱いていた。
今の自分があるのは全てヒーロー達のおかげだ、という程に熱い気持ちを持っていて、
嫌な事があっても、戦隊ヒーロー物のTVを見るだけで、明日を生きる気持ちが湧いてくるのだった。


だが、さすがにそのメールは怪しいと思った。
そんな会社が世の中にあるわけがない。
だが、この就活サイトは就活生がみんな使っている有名サイトだったし、
そのような怪しい企業の登録を許すはずのないものだったため、
ダメもとで百合子は面接に応募してみる事にした。
面接に参加してみると、それは思ったよりも怪しい雰囲気ではなかった。

そして、彼女は適正があったのか、面接を通過して無事にヒーローになったのだった。


・・・

ヒーローになってみて、百合子は初めてこの業界の事を知らされた。

まず、このヒーロー業界は非常に歴史の長い業界であり、ガチガチに縦社会だった。
新人はまず「ヒーローとは何か」を学ぶための「ヒーロー研修」の参加が義務づけられ、
百合子は、入社から半年は研修合宿などを通じてみっちりとしごかれた。

先輩ヒーローへの挨拶の仕方、お茶のいれ方、名刺交換のやり方などに始まり、
もちろんヒーローにふさわしい日々の過ごし方、変身前の状態でのふさわしい髪型や服装マナーなど、
細かな規則などが契約書にもビッシリと記載されており、百合子は少し目眩がしたものだった。

見習い期間は街のゴミ拾いから始まった。

この段階で、まだ変身グッズは支給されない。
見習い達は思い思いのヒーローのコスプレを自分で作成して、
その見習い活動に参加しなければならなかった。

近所の川のゴミ掃除の時、見習いヒーロー達は十人十色のコスチュームを着用し、
郊外から自費で電車に乗ってその活動に集まって来たものだった。
何も知らない人から見ると、たくさんの統一性のないヒーローが集まってゴミ拾いをしており、
かなりシュールな光景に冷たい視線が投げかけられる事も頻繁にあったが、
そのような他人の目による羞恥心の克服も、この見習い期間で求められる成果の一つだった。

百合子は「リリーナイト」というヒーローのコスチュームを自作した。
それは百合子の名前に入っている「百合」の花をベースに創作されたものであり、
白を基調としたコスチュームは彼女の純粋な精神の象徴ではあったが、
川のゴミ掃除には徹底的に不向きで、汚れるたびに何度もクリーニングに出すハメになった。


しかし、百合子の頭の中にある理想のヒーロー像への憧憬は強く、
先輩や同僚からの批判にもめげず、彼女は何着も変え着を用意してまで、
その白のコスチュームにこだわって見習い活動を続けたのだった。

そしてゴミ拾い以外にも活動内容は広がり、
犬のフンを片付けたり、横断歩道で老人を助けたり、
ご近所さんの突然の雨には洗濯物を取り込んだり、
酔っ払って倒れているサラリーマンの介抱まで幅広く活躍した。

その、世の中の役に立つことであれば小さなことでも取り組む姿勢から、
人々からは「便利屋」と蔑む声すらあったのだが、
百合子は周囲の批判に負けず、地道に見習い活動を続けていた。

実際、ヒーロー業界ではこの段階で心が折れてしまう人も多い。
もしくはずっとこの見習い期間で仕事がなくて、
他のアルバイトを掛け持ちしながら続ける人もある。
収入は出来高払いのため、仕事がなければ続けるのも困難な職業だった。


だが、百合子は朝から晩まで努力した。
朝は誰よりも早く現場にいってゴミを拾い、
夜は誰よりも遅く残って次の日の活動内容の準備を行った。
ある日、気がついた事を書き留めているノートを事務所に忘れて帰った百合子は、
そのノートを先輩のヒーローに発見され、その勤勉さを評価されることとなった。


・・・


そして、百合子は「児玉坂」のヒーローになった。


説明しよう。

皆さんがTVで見かける戦隊ヒーローなどはこの業界では雲の上のような存在であり、
ヒーロー業界でも生え抜きのエリートだけが戦隊ヒーローになる事を許された。
よって、そのような全国区のヒーローをピラミッドの頂点として、
その下に都道府県のヒーロー、市のヒーロー、村のヒーロー、特定エリアのヒーローなど、
ガチガチに階層が固定されているのであった。

この業界は非常に歴史が古く、ピラミッドの上の人が引退したりして後任を指名しない限り、
下の者が出世して登っていく事は基本的にない。
また、その担当エリアの人々の支持率も会社の評価につながる非常に重要な要素となった。
この構造の悪影響か、いつまでたっても先輩ヒーローへの接待はなくならなかったし、
各自その担当エリアの人々への挨拶や正義活動の報告などを欠かすことはできず、
なかなか日本全体のことを考えるヒーローは現れなかった。


そんな中、百合子は異色の女性候補だった。

彼女はエリアを問わず、日夜勤勉に働く仕事振りを世間から認められており、
女性の社会進出を後押しするという日本社会の風潮も重なって、
「児玉坂特別区」の地域限定ヒーローになることができたのだった。
これは政府の特別行政区構想の一つであって、
このエリアだけで新しい社会実験を行い、
もしそれで上手く成果が出るようであれば、全国区へ展開するというものだ。
百合子が抜擢されたのは「児玉坂」エリアだけの実験的なヒーローだった。


そして百合子は運が良かった。

一般的に、地域限定ヒーローと言えばご当地色を出さざるを得ず、
その地域の産業おこしなどの思惑も絡み合うために、
自分の特色をアピールするよりも、その地域の特色に合わせる必要が出る。
沖縄であればサトウキビ、秋田であればナマハゲという風に、
一定の縛りの中でヒーロー像を作っていく必要があるのだが、
百合子の場合はそうではなかった。

百合子はむしろ「実験区」での活動であったために、
当時としては斬新な百合の花をベースにしたそのキャラクターが受け、
また政府としてもクリーンなイメージを大変に好んだため、
「リリーナイト」は百合子の考案のままで採用されることになった。
だが、もちろん実験区での活動には一定期間での成果も求められる。
政府からの援助がある分、世間からの批評も一層シビアになるのだった。


そして百合子にはTVの取材も訪れた。

新しい政府が抜擢した新人ヒーロー候補ということで、
新聞やマスコミ各社はこぞって彼女にインタビューを試みた。
そして、彼女の可愛らしいルックスも取り上げられて、
「百合の天使」というキャッチフレーズまでつけられる大人気となった。

百合子のプロモーションが予想以上に成功し、
資金的な都合がついたため、政府は彼女に変身グッズを提供することにした。
それが百合子が普段から身につけている「白い腕輪」であった。
この腕輪の中央に刻まれている「♪」のマークを撫でることで変身が可能で、
彼女は自前でコスチュームを用意する必要もなくなった。
この腕輪は日本とアメリカが共同開発している最新技術が駆使されており、
見た目だけではなく、そのパワーも人間離れした能力を得ることができた。


そして百合子は小さな特定区のヒーローでありながらも、
全国区に名前が知られるヒーローとなったのだった。
その流れを察知したのか、悪の組織もどうやら児玉坂を標的とし始め、
百合子はしばしば現れる怪人たちと戦う仕事にも従事するようになったのであった。


・・・

 

初めて児玉坂に現れた怪人は「セキユズラズマン」だった。
この怪人は、電車の中で老人や弱者に絶対に席を譲ることのない極悪怪人で、
百合子の正義の心からすれば許すことのできない悪であった。

児玉坂に駆けつけた百合子は、その駅の電車の中で暴れる怪人に対して、
まずマナーの注意から始めることにした。

「そこをどきなさい!お年寄りや妊婦さんが座れないじゃない!」

怪人は自分の携帯でずっとパズルゲームを行っていて話を聞いていない。
百合子は彼の腕を掴んで立ち上がらせ、駅のホームへ連れ出した。

そこには多くのTVカメラが入っていて生放送を行っていた。
百合子は特にTVカメラを気にせず、怪人に対して正義の怒りをぶつけていた。

怪人は携帯に付いているカメラ機能を使って百合子を撮影し、
「お前の顔をネットに晒してやる」と暴言を吐いた。

百合子の怒りは頂点に達した。

「音符よ、奏でて!」

そう腕輪に語りかけながら「♪」マークを撫でた百合子は、
清らかな光に包まれて「リリーナイト」に変身した。

「輝く花弁は正義の証、白く咲きたる百合の花、リリーナイト参上!」

怪人は黙っていたが、携帯を焦りながら操作して写真をアップロードしようとしている。

「甘いわね、目が悪くなるほどパソコンしてた私の方が断然あなたより機械に詳しいわ!」

リリーナイトは携帯を持つ怪人の手を蹴り上げた。
携帯は宙を舞い、この怪人の末路は、それが落ちてくるのを待つまでもなかった。

「リリーホワイト・サウンド・フラッシュ!」

リリーナイトは腰からラッパ形の白い銃を取り出して音速の光を放った。
怪人はその光に撃たれて壁まで吹っ飛ばされた。

「この白い花、決してあなたたちに汚すことはできないわ・・・」


そう、川の掃除に従事する以外、彼女の衣類が汚れることは決してないのであった。



・・・


リリーナイトの活躍はTVや新聞でも報道された。

初めての怪人との対決を生放送した番組の視聴率は極めて高く、
リリーナイトはお年寄りから子供たちまで、幅広い層に知られるヒーローになったのだった。

政府も会社も、この百合子の大活躍を褒め称え、
この特別実験区の成果を高らかに喧伝した。

百合子もまんざらでもなく、子供の頃から憧れていたヒーローになり、
さらに全国区で知名度のあるヒーローになれた事にたいそう喜んだ。
そして、もっとカッコよく変身できないか、
もっとカッコいい必殺技を考案できないかなど、
その一挙手一投足にまで細かく気を配ってヒーロー像を演出し続けた。


・・・


そんな風にして、百合子の活躍は続いた。

「セキユズラズマン」の後には「トクメイマン」が現れた。
自らが何者であるかは明かさず、それでいて他人の悪口をネットに書き込んで誹謗する極悪怪人だった。

またその次の奴は「ランキングマン」だった。
すべての人に一つの価値観だけで序列をつけて、その人間の本質的な価値を否定する極悪怪人だった。

その他にも「キモチオシツケマン」「ストーカーマン」「ナリキンマン」など、
多数の極悪怪人が児玉坂に現れたが、すべてリリーナイトに変身した百合子が倒していった。
すべてTV放送の視聴率は上々で、スポンサーに名乗りをあげる企業も増えていった。

政府はこの特別実験区での成果レポートをまとめ始め、
この特別区の試みを全国区に広げようという活動は拡大していった。
百合子の会社も、政府の援助を受けてその規模を拡大させ続けていて、
この活動を全国区に拡大する法案が可決されれば、仕事にあぶれている見習いヒーローを使って、
各地方や市町村に複数人のヒーローを配置し、
新しいヒーロー像の創出を実現させようという機運が高まっていた。

百合子をはじめとして、皆の前途は明るかった。
この時までは・・・。

・・・


ある日、百合子が児玉坂の街の掃除をしていると、
街中で泣いている子供を見つけた。
百合子は正義感に震え、近づいていって話かけた。

「どうしたの?なんで泣いてるの?お姉ちゃんに話してみて?」

百合子は保育士を目指していた事もあるほどで、
子供を含めた社会的弱者に対してはめっぽう優しい。
大人として高い地点から接するという優しさよりも、
彼女の場合は同じ目線から彼らの気持ちを理解できる優しさを持ち合わせていた。

「・・・ボク、にんげんがきらいなんだよ」

子供は泣きながらそう答えた。
百合子は少し首をひねって、もう少し聞き込みを続けた。

「にんげんがきらいってどういうこと?」

「・・・みんなうそつきばっかりだし、おともだちなんてできないよ。
 ひとの目を見るとなんかこわいんだ、嘘つかれちゃうんじゃないかって・・・」

子供はずっと下を向きながら辛そうにそう吐き出した。
百合子は子供が自分に気持ちを打ち明けてくれたことで、より同情心が疼いた。

「そっか・・・でもさ、世の中は悪い人ばっかりじゃないよ。
 今はお友達できなくても、君のことを理解してくれる人もいるからね。
 そうだ、じゃあ、まずお姉ちゃんとお友達になろっか?」

百合子は笑顔を見せて子供の手を取って自分の小指を子供の小指に絡めた。

「これで、お姉ちゃんとお友達だよ。
 お姉ちゃんは君のことを絶対に裏切らないからね。
 指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った!」

百合子はニコッと笑って子供にそう告げた。
彼女の子供やお年寄りなどに対する優しさには、
この世にたとえ嘘や偽りが氾濫しているとしても、
まだまだにんげん棄てたものではないなと思わせてくれる、
そういう真っ白で純粋な清らかさで満ちていた。
  
「・・・お姉ちゃん、本当にボクを守ってくれるの?」
「うん、絶対に守るよ、約束したからね!」
「・・・いったい、お姉ちゃんは何者なの?」

百合子は誇らしく夢を与える気持ちと共に告げた。

「お姉ちゃんはね、無敵の正義のヒーローなんだよ。
 完璧で弱点なんかないんだ、だから君を守ってあげられるよ」

それを聞いた子供は初めて嬉しそうな顔をした。

「・・・うん、お姉ちゃんすごいや!
 ありがとう、じゃあボクたちずっとともだちだよ!」


百合子は子供と同じ目線までしゃがみこんで話をしていたが、
その時、百合子の鞄に入っている携帯電話がなった。
電話は会社からの連絡で、児玉坂にまた怪人が現れたという知らせだった。

「わかりました、現場近くにいますので、すぐに駆けつけます」

百合子は電話を切った。

「ごめんね、お姉ちゃん、悪い奴ら倒しに行ってくるからね。
 君は、君で頑張るんだよ、負けないで!」

百合子は手を振ってその場を後にした。


・・・


 

百合子が会社から告げられた場所にたどり着いた時、
すでに怪人はそのあたりの人々を襲って暴れていた。
怪人の名は「コメカミマン」というものだった。

百合子はその姿を見た時に鳥肌が立つ思いがした。
その姿は今までの怪人とは少し変わっていて、
人間の巨大な顔が怪人の本体そのものだった。

そして、その顔の「こめかみ」の部分に目があり、
要は普通の両目に加えてさらに2つの目が付いていた。
そして、合計4つの目はまるで金魚の出目金のような目をしていて、
ギョロリと百合子を睨みつけていた。

この怪人に見つめられた人々はその迫力に思わず目をそらしてしまう。
その一瞬の隙を攻撃されてやられてしまうのであった。

百合子もその怪人を真っ向から見つめることは不可能だった。
そして、得体の知れない恐怖を感じながらも、
「自分は無敵のヒーローだ、平和を守らなきゃ」と自己を鼓舞し、
とにかくさっさとリリーナイトに変身した。


リリーナイトに変身した百合子はひとまず心が落ち着いた。
その仮面を通じて見た怪人の姿は、もう先ほどのように恐ろしくはなく、
遠方からの「リリーホワイト・サウンド・フラッシュ」によって、
「コメカミマン」の4つの目を攻撃してあっさりとやっつけてしまった。

「この白い花、決してあなたたちに汚すことはできないわ」

決めゼリフを残して、百合子はその場を後にした。


・・・

異変が起きたのはここからだった。

大きなやりがいを感じて帰宅した百合子に会社から連絡が入った。

「今回の視聴率が恐ろしく悪かった」と告げられた百合子はショックを受けた。
自分の感じていた大きな達成感とは裏腹に、視聴者の評価は低かったのだ。

百合子は今まで全く気にしたことのなかった視聴率を初めて気にすることになった。
自分は正しい活動をしているのだから、頑張れば正しく評価されるのは当然だと考えていたし、
元々、TVの視聴率のために戦っているのではなかったからだ。

しかし、この視聴率事件によって会社は政府から大きく批判を受けることになった。
せっかく特別区法案の改正を進めているのに、これでは世間の評判に逆風が吹きかねないからだ。
百合子の視聴率が下がって民意を得られなければ、法案は可決しても与党の信頼は揺らぐ。
政府は会社を通じてリリーナイトのテコ入れを図るように要請した。

百合子はショックを受けながらも色々と理由を考えてみた。
おそらく、今回の怪人の特性上、まともに目を向けられた視聴者は少なかったと予想した。
また、もしくは自分の必殺技がそろそろ飽きられてきているのかもしれないと思った。
本人からの反省点と改善点はこの2つだったが、会社側は別の見解を持っていた。
初めて聞いた時、百合子はその事実に驚いた。

「リリーナイトの色が赤色になっている」

会社の社員と共にTVのVTRを見直した百合子は愕然とした。
指摘された通り、リリーナイトの外見はいつもの白色から派手な赤色に変わっていた。

百合子はなぜこのような色になっていたのか理解できなかったが、
腕輪の故障と考えて開発者へ修理点検の依頼を出した。
だが、点検の結果は全く異常は見られなかった。

「この腕輪は本人の『心』のエネルギーを使って変身します。
 もし結果に異常が見られる場合、それは当人の自己責任でお願いします」

という簡単な返答をよこすのみだった。


その返答結果にも百合子は納得できなかったが、
彼女自身、何より赤い色になっているのが我慢できなかった。
百合子は戦隊ヒーローが好きではあったが、
レッドには特に色々と強いこだわりがあった。
あまりにレッドらしいレッドは好きではなかったのだ。

彼女の言う「レッドらしいレッド」とは、
その赤色が象徴するような激しい自己主張を持つキャラクターだった。
リーダーシップをとり、我を通していくようなレッドは苦手で、
例えばやんちゃな末っ子タイプのキャラがレッドであれば救われた。
もしくはレッドでも主張しすぎずに周りのキャラを立てるような、
そういうリーダータイプではないレッドであれば受け入れられた。

ただ、この色はとても誤解されやすい色だと百合子は考えていて、
ゆえに真っ白なリリーナイトの色を最も好ましいと思っていた。
白色であれば全く誤解される要素はないし、
そもそも、自分にはレッドが持つような我を通す性格は全くなかったからだ。


結局、変身をして確かめてみた結果、
やはりリリーナイトの色は赤色だった。
この点はすぐには修正できないため、応急処置として新しい必殺技を追加した。
次回は新しい必殺技を使って怪人を倒すことで視聴率の回復に努めるという結論に至った。


そして休む間もなくその機会はすぐにやってきた。


・・・


 

次に児玉坂に現れた怪人は「フクヤテンインマン」だった。
この怪人の特徴は、断れない性格の買い物客を中心に声をかけ、
買う必要のない洋服までお薦めして買わせてしまう極悪怪人だった。


怪人を見つけた百合子は怯えていた。
前回のような結果になってしまったらどうしようという不安が頭をかすめたが、
兎にも角にも、自分は戦わなくてはならなかった。

颯爽と変身をした百合子はリリーナイトになった自分の色を確かめた。
やはり赤色をしていることがわかったが、しかし気にとめている時間はなかった。
この怪人の攻撃を受けてしまうと余計な出費に頭を痛めることになってしまう。


「先手必勝よ!いでよリーフ・ソード!」

百合の葉をモチーフにした新しい武器を呼び出したリリーナイトは、
その緑色をした視聴者の目に優しい武器に惚れ惚れとしていた。
しかし「白と緑」であればエコなイメージが増すのだが、
「赤と緑」であれば、なんだか季節外れのクリスマスカラーであり、
リリーナイトはリーフソードを呼び出してから少し気恥ずかしく感じてしまった。


そして、その一瞬のためらいが仇となった。

「フクヤテンインマン」はリリーナイトの羞恥心の匂いを嗅ぎ取り間合いを詰めてきた。
気づいた時にはリリーナイトは怪人の射程距離内まで踏み込まれていた。

次の瞬間にはリリーナイトは複数の必要のない洋服を左手に持たされていた。
そして財布からずっと大切にとっておいた今年のお年玉を取り出して怪人に手渡してしまった。

「うわぁぁー!」

リリーナイトは心から苦痛の雄叫びをあげた。
そして咄嗟にリーフソードを怪人に突き刺した。
結果として痛み分けの形になり、お年玉という犠牲と引き換えに怪人を退治することができた。
怪人の射程距離内は、同時にリリーナイトの射程距離内でもあったのだった。


そして、百合子はその日、涙にくれながら帰宅した。
会社からは「なんだあの無様な戦いは!」とこっぴどく怒られた。
スポンサーからの苦情が相次ぎ、電話が鳴り止まないということだった。


・・・

そして、冒頭で説明したように、最低視聴率をまた更新してしまった。

もはやそれは誰が見ても明白だった。
先日の無様な戦い、赤色のリリーナイト、そしてお年玉の強奪・・・。
自己の金銭的な痛みに加えて、お年玉という子供達の夢を守ることすらできなかったのだから。


その翌日、百合子は悲嘆にくれて、会社に休暇届を出して埼玉の実家に帰郷したのだった。


・・・

 

埼玉の実家に帰ってから3日が経過していた。
どうやらこの数日、怪人は児玉坂に現れていないようで、
百合子は久しぶりの休日を実家でゆっくりと過ごしていた。


百合子の実家には庭がある。

植物好きだった祖父の影響で、庭には松の木や柿の木もあるし、
植木や盆栽など、彼女の実家の庭は緑の植物で満ちていた。

その縁側で、百合子はボーッと空を眺めていた。

青く澄んだ空に浮かぶ綿菓子みたいな雲を見ていると、
それだけで汚れた心が洗われていく思いがした。
真っ白は偉大だ、混じり気がないから偉大だ、と百合子は思った。

(・・・あの流れる雲になりたいな・・・)

百合子がゆるゆるとした時間を過ごしていると、
愛犬のポメラニアンが百合子の元へ駆け寄ってきた。
久しぶりに会う愛犬は百合子の帰郷を祝福してくれていた。
そのもふもふした毛に自分の手が触るたび、
嫌なことは一つずつ心から泡になって消えていくような気がした。


百合の花には「花ガラつみ」が不可欠である。
花が咲いた後、しぼんできた花ガラを摘み取らなければならない。
そうしないと種子に養分を取られて翌年にうまく花が咲かなくなる。
花ガラをしっかり積んでおけば、球根に十分に養分を蓄えることができるため、
翌年にはまた立派な花を咲かせることができるのである。


おそらく、百合子はそういう百合の花のような人間であった。
彼女には不思議な二面性がある。
それは、正義感に燃えて負けず嫌いな情熱を発する時と、
一人で流れる雲のようにふわふわと過ごしている時だった。
いったいどちらが本当の百合子であるのかと考えて見ても答えは出ない。
結局、それはどちらの百合子も本当の姿であるのかもしれない。
それは、清らかな純白の花を咲かせる期間と、
その養分をしっかりと球根に蓄えながら次に咲く機会を待つ期間の、
その両方が百合子の人生の中にはあるのだろう。
だから、彼女にとって養分をしっかりと蓄えるこの期間は、
次に花を咲かせる機会を待つ、とても大事な時間であった。


「お姉ちゃん」

ふと声のする方へ目をやると、そこには小学生の男の子が立っていた。
それは近所に住む「松坂くん」という男の子だった。
彼は百合子の実家の近所に住んでいて、時々この庭に遊びに来るのだ。
百合子もなぜかこの子が他人のようには思えず、とても可愛がっていた。

「あ〜っ、松坂くん、久しぶり、こっち座りなよ」

松坂くんは嬉しそうに百合子の隣に駆け寄って縁側に座った。
彼の髪の毛は相変わらず海苔のようにツヤのある真っ黒い色をしていた。

「ちょっと待っててね」と告げて百合子は部屋の中に入っていった。
冷蔵庫からバニラアイスを2つ取ってきて、一つを松坂くんにあげた。

百合子は混じり気のない真っ白なバニラアイスが好きだった。
むしろ、何か他のものが混じっていると、それをわざわざ分けて食べるほどに、
この純粋なバニラアイスの白を好んでいた。
それは、彼女の真っ白な正義感と同じ種類の共鳴を感じていたのかもしれない。

ゆっくりと静かに舌の上で溶けていくバニラアイスを楽しみながら、
百合子は真っ白な甘い幻想に包まれていった。
全ての時間は雲のようにゆっくりと流れ、平和で全てが穏やかで丸く収まっている世界。
誰かが誰かを脅かすこともなく、ただ柔らかな風に揺られてゆらゆらと揺れる花のように生きる。
もしくは日向ぼっこしている猫のように自由な生活であり、
誰にも束縛されずに伸びをして、毛づくろいをして、優しい人の膝の上を見つけては、ただ眠る。


植物を育てる事を本当の意味で楽しむ事ができる人は、
おそらく花が咲いていない期間にも、その植物の美しさを愛でることができるのかもしれない。
それは、球根にゆっくりと養分を蓄えていくこの百合子のような様を、
きっとゆっくりと眺めながら可愛らしいと愛でることができるのだ。


「お姉ちゃん」

松坂くんはバニラアイスを食べ終えて口を開いた。

「どうしてリリーナイトは赤くなっちゃったの?」

松坂くんはTVで百合子の戦いを見ていたのだろう。
彼には百合子がリリーナイトであることはもちろん伝えていて、
彼は誰よりもリリーナイトのファンでいてくれた。

それだけに、今の百合子にはこの質問には答えようがなかった。
赤いリリーナイトに一番悩んでいたのは百合子だったし、
それがおそらくみんなに好かれていないこともわかっていたからだ。

「・・・ヒーローだってね、きっとピンチな時はあるんだよ」

百合子は少し考えた後、自分でも無意識にそう呟いていた。

「でもさ、ピンチがあるからまた強くなれるんだよ。
 戦隊ヒーローだって、いつも強いわけじゃないよね?
 でも、そこから復活して必殺技を編み出したりして、
 それで悪を倒すから面白いんだよ」

百合子は自分でもこんな話をしている意味がわからなかった。
そして、自分で自分の言葉を聞いていて、確かにその通りだと納得した。

「リリーナイトは強いんだよ、無敵なんだ。
 正義は最後に必ず勝つよ、だから大丈夫だよ」

百合子はどこかで胸騒ぎを感じながらも、
その想いをグッとこらえて松坂くんにそう告げた。

松坂くんは「またTV見るからね」と言って帰っていった。
きっとリリーナイトがどんな醜い色になっても、
松坂くんのように応援してくれる人がいると思うと、
百合子は嬉しくて涙が出てきた。

(・・・世の中全部は正しく行かないけど、せめて自分は正しく・・・)

百合子は胸に手を置いてそう考えた。
ふと顔を上げると、庭に紫陽花が咲いているのが見えた。
そういえば何処となく初夏の香りが漂っている。
百合子は「もうそんな季節になったのか・・・」と呟いた。


・・・

その日の夜、実家ではあったが母に負担をかけたくないと思い、
百合子は自炊をすることにした。

スパゲティーを茹でて、ソースを作ろうと考えた時に、
いつもはトマトソースがお好みの百合子ではあったが、
今日だけはトマトソースを加えない味付けに変えた。
完成したボンゴレ・ビアンコの白さに、やはり今日はこちらで正しかったと思った。

ふと台所に作り置きしてあったたまごスープを見つけた。
負担をかけまいと考えたけれど、やはり母は偉大だと思った。
一口飲んだ時、その優しい味付けに何より癒された気もした。


その後、お風呂で半身浴をしながら「握手戦隊ノギレンジャー」のDVDを観た。
この戦隊シリーズは通常の戦隊モノとは一風変わっていて、
どのレンジャーの色もなぜか紫だったが、皆とても個性的なキャラをしていた。
どんな悪の怪人がやってきても、最後には握手してその怪人を癒してしまう。
悪の怪人に悩まされることも多く、レンジャー達の葛藤も尽きなかったが、
それでも強く優しくみんなに元気を振りまき、最後には握手で癒してしまうのだ。

百合子は特にその中で登場する追加戦士の「ノギイナイト」が大好きだった。
追加戦士とはヒーロー戦隊ものを好きな人だけが知る専門用語で、
要は通常5人の戦士達がメインで登場するのだが、
番組の途中から現れる6人目の戦士の事をそう呼ぶのだ。
そして、この手の追加戦士は極めてミステリアスで、何より強い。
5人の戦士がピンチに陥った時、颯爽と助けにきて、また颯爽と去っていく。


百合子は小さいころから何度もこの番組を観てきた。
そしてこの圧倒的な強さを持つ「ノギイナイト」に憧れた。
彼女のその異常なまでの強さへの憧れの本当の理由は、
おそらく彼女自身も気づいてはいたが、
それは自分自身の弱さだった。
身体も昔からそれほど強くなく、何より精神的にもコンプレックスが多かった。

いつからか、そんな自分を励ましてくれたのが戦隊ヒーローだったのかもしれない。
そこには自分とは違う圧倒的な強さがあり、惨めな弱さなど微塵もなかった。
百合子の心の養分は、常に「ノギイナイト」から吸収されて、
ヒーローになってから変身する時も、常に頭の中には「ノギイナイト」がいた。

だが、それは百合子だけではないのかもしれない。
誰の頭の中にも理想的なヒーローは住み着いていて、
それが弱った時ほど勇気をくれるものなのだ。
そして自分をその理想のヒーローに重ねて一体となる。
そうすれば弱い自分は消え去って強い自分になれるからだ。


だが、今の百合子は揺れていた。
私は本当は「ノギイナイト」なんかじゃなかったのかもしれない。
そうやって自分を重ねてきてずっと養分をもらい続けてきたけれど、
自分の花が咲いてみると、それは「ノギイナイト」の持つ紫の花ではなく、白い花だったのだ。
そしてその花の色は、今やなぜか赤色に染まってしまった・・・。


「あっ・・・」


百合子はDVDを観ながらふと気がついた。
そのシーンは「ノギイナイト」が自分の揺れ動く心の葛藤に悩んでいるシーンだった。
「こんなシーンあったっけ?」と百合子は思った。
それは子供の頃からずっと観てきた番組だったけれど、
自分の頭の中の「ノギイナイト」は常に無敵でカッコいい存在だった。
あるいは、その場面しか自分の中に記憶されなかったのかもしれない。

「ノギイナイトも葛藤してたんだな・・・」

その呟きが無意識に口をついて出た瞬間、
百合子は自分が涙を流しているのに気がついた。
その涙は、雨上がりの百合の花に滴る雫のように美しかった。

浴槽に十分に浸り、根っこから水分を吸収した百合子は、
「植物は可愛いだけじゃない、根っこはしっかりしてるんだ」と呟いて浴槽を後にした。
浴室を出る時、排水溝に溜まった髪の毛が少し気になったが、
明日、母に掃除をしてもらえばいいやと思った。


風呂上がりに冷蔵庫から牛乳を取り出して飲んだ。
そして、ふと冷蔵庫に残っていたもやしとひじきの料理を見つけて、
「もやし」や「ひじき」の名前をつけた人は天才だなと思った。
どうやったらこんなにしっくりくる名前をつけられるのだろう。
「もやし」も「ひじき」もその細い姿にピッタリの響きを持っていて、
存在と名前が完璧に融合して、ある意味でとても美しいではないか。
きっと「もやし」と「ひじき」は幸せだろうなと小さく笑った。


夜が更けて、また縁側へ行った。

夜は夜で百合子の楽しみがあった。
それは心静かに星空を眺めることだった。
だが、この日は百合子にとって少し特別な夜になった。

「あっ!」

縁側から見える庭には無数の光が飛び交っていた。
それは蛍だった。

無数の光の明滅が乱舞して、静かな夜に立体的な輝きを宿していた。
百合子は縁側にぺたりと座り込んで、とても静かにその儚い幻想風景を眺めていた。

百合子の白い肌が、夜の涼しい風に当てられて優しく揺れている気がした。
「ホタルは一生懸命だ」と百合子は思った。

その縁側に咲く一輪の花は、この世界の儚さを想った。
花だって、蛍だって、その命はとても短い。
それぞれ、他の何者にもなることはできないのだ。
でも、その自分のあり方で一生懸命に生きている。

その草木や虫達の音を全身で聴きながら、
時間ができたらまた一人で旅に出ようと百合子は思った。
そして寝室に入り、うつ伏せで枕をギュっと抱きしめて眠った。

・・・

百合の花は、種から育てると咲くのにとても時間がかかる。
だからみんな、花ガラを積んで球根に養分を蓄えさせるのだ。
そしてその球根を分けることで数を増やすことがほとんどである。
だが、種から育てると咲くのに何年もかかるその花が、
小さな芽を出して、やがて大きな白い花をつける様を、
長い間見守ってみるのも面白いのかもしれない。
その清らかな白い花弁は外ハネの形をしていて、
活発な性格をラッパのような花の形で表している。
きっと、鉄砲百合は音楽が好きな花なのであろう・・・。

・・・


 

翌日、百合子は目覚めると、台所で野菜を調理して食べた。
味噌汁には地元で採れた名産のねぎをたっぷり入れた。
そして、一緒に作ったゆで卵は完熟になるまでしっかりと茹でた。
半熟なんて曖昧な形は百合子には理解できなかった。
どうせなら生卵か完熟か、ちゃんと白黒はっきりさせてほしいのだ。


お腹も満足したところで、そろそろ児玉坂に帰ろうと思った。
自分の留守中に怪人が現れてもみんなが困るし、
次の戦いに何か秘策があるわけではないけれど、
前回の戦いで負った心の傷は、もう十分に養分を得て癒された。


そして、ちょうどその時に携帯の着信が鳴った。
児玉坂に新しい怪人が現れたという会社からの連絡だった。

百合子は出かける支度をし、左手に白い腕輪をはめて実家を出た。
しかし、百合子の実家には電車が1時間に1本しか来ず、
ひとまず児玉坂周辺のヒーローに自分の代わりに出動を頼んだ。

駅でなかなか来ない電車を待ちながらも、
この流れでいけば、もしかすると自分が追加戦士のような形で、
援軍として現れる形になるかもしれないと、不謹慎だが少し心が躍った。


・・・


百合子が児玉坂に到着した時、彼女が想像した通り、
近所のヒーロー達は先に怪人と戦ってくれていたのだが、
手強い怪人に手こずってボロボロにやられていた。

「赤坂レッド」も「青山ブルー」も倒れていたし、
「永田町ブラック」や「六本木ゴールド」も生気を失っていた。
「銀座シルバー」のみが倒れながらもかろうじて生き残っていた。


「みんな、しっかり!」

百合子は倒れている「銀座シルバー」を介抱しながら言った。

「リリーナイトか・・・気をつけろ、今回の怪人は並の奴じゃない・・・」

それだけ言い残し「銀座シルバー」は気を失った。
だが、命には別状はないようだった。

百合子は児玉坂病院に連絡を取り、救急車を要請した。
5人の戦士達は担架に乗せられて運ばれていった。


(・・・今回の怪人、一体どれだけ恐ろしい敵なんだろう・・・)


百合子は不思議に思った。
まず、ヒーロー達がやられているにも関わらず、
怪人の姿が周囲に見られないのだ。

そして、さっきから雲行きが怪しい。
近くの空には、よく太った入道雲が見えている。
まもなくひと雨やって来るのかもしれない。


百合子は周囲を見回してみた。
だが、怪人の姿は全く見えない。
しかし何か妙な寒気がした。
誰かが感情を殺して自分を見つめてじっとしているような、
そんな薄気味み悪い感覚が百合子の全身を支配していた。

そして、百合子にとって少し奇妙に思えたのは、
先ほど通りすぎた「排水溝の蓋が少しだけずれていた」ことだった・・・。


その時。


百合子は、何か黒い紐のような物に後ろから足を絡め取られた。
その黒い紐は百合子の両足を縛りつけるようにして絡みつき、
そうかと思うと、瞬時にして強力な力で思いっきり後ろへ引っ張られた。

百合子の体はうつ伏せに地面に倒れ、そのまま黒い紐に引きずられていった。

(・・・排水溝だ!・・・)

百合子は黒い紐に足を引っ張られたまま、
この黒い紐が出てきている先が排水溝であることに気がついた。

そして、その先に繋がる下水道から得体のしれない悲しみの音が鳴っているのにも気づいた。
何かドス黒い物が今回の怪人の正体なのだと言うことを悟った。

その時、引っ張られている黒い紐を指で解こうと努めていて百合子は気づいた。
この黒い紐は、人間の髪の毛だった・・・。


「うわぁー!!」


百合子は手に絡まった髪の毛を見てパニックに陥った。
そして、昨日浴室で見たあの排水溝の汚れを思い出した。

百合子は浴室の排水溝の掃除が大の苦手だった。
実家ではいつもお母さんに片付けてもらっていたし、
児玉坂に一人暮らしをしている時は、いつも友人に掃除を頼んでいた。
あの髪の毛の詰まっている様子がどうも生理的に受け付けず、
どうしても自分一人では掃除ができないのだった。


百合子はあまりの気持ち悪さに泣き叫びながら腕輪を撫でた。
しかし、どうしたことか腕輪は全くの無反応であり、
百合子はリリーナイトに変身することができなかった。

(・・・やっぱり腕輪の故障だったんだ・・・)

百合子はいい加減な返答を寄せてきた企業を恨んだ。
こんな大事な時に故障なんて、本当にシャレにならない。

そして気づいたら雨が降り始めていた。
百合子は自分の涙がわからないくらいにびしょ濡れになっている。
それでもやはり泣きながら足に絡みつく髪の毛を取ろうともがいていた。

やがて下水道から排水溝を抜けて怪人が姿を現した。
怪人の名は「ハイスイコウヘドロマン」だった。

怪人の体はドロドロのヘドロで構成されていて、
髪の毛がたくさん絡みついた排水溝の盾を持っていた。
そして百合子の足に絡みついている髪の毛は、その盾から伸びてきていた。


雨は激しさを増して降り続け、怪人から放たれるヘドロは百合子の服にこびりつき、
もうとにかく映像としてはぐちゃぐちゃのめちゃめちゃだった。
華麗なヒーローものの番組を見てこんな場面が写し出されようものなら、
きっと、どんな子供達も一瞬で泣いてしまうような酷い光景だった。

だが、変なところだけ人間は妙に頑張っているもので、
百合子の近くにはカッパを着て、まるで台風のレポーターのようなカメラマンが、
なぜか律儀にTVの生放送を撮影し続けていた。
そんなところを頑張るのなら、もっと他にエネルギーを割いてくれと思った。
みんながそうすれば、正義のヒーローなんていなくても世界はきっと平和になるのだ。


百合子の足の髪の毛はいくら解いても絡みついてきて取れなかった。
そして怪人は一歩また一歩と百合子の方へと歩み寄ってくる。
この場面を百合子は見たことがあった。
そうだ、あの好きなアニメ映画の風呂屋のシーンに出てくる神様にそっくりだと気づいた。

(ああ、どうかお願いします、おかえりください!)

絶体絶命のピンチに思われたその時。


「ブゥワァー!」

怪人の胸には紫色の剣が刺さっているのが見えた。
そして怪人は苦しそうに後ずさりを始めた。

「大丈夫か、リリーナイト!」

そこに現れたのは紫色のアーマーを身にまとった「ノギイナイト」だった。
あの子供の頃からずっと夢にまで見ていた追加戦士が、
まさにこの状況で百合子を助けに来てくれたのだった。


「ノギイナイト様!?」

百合子は色々な意味で大パニックに陥ってしまった。
ずっと憧れていた人が自分を助けに来てくれたという事実と、
ヒーロー業界の大御所であるお方が、こんな雨の中で傘もささずに立っていて、
通常であれば自分のような特定区のヒーローは傘持ちすら許されないのだ。
そして日本中から援軍要請が来ているはずの彼が、
こんな自分のためにわざわざ児玉坂までやってきてくれたのだ。
自分が所属する会社がギャラを払いきれるのだろうか。
色々な思いが一度に百合子の頭の中を光の速さで駆け巡った。

「これでもう大丈夫だ」

ノギイナイトは百合子の足に絡みついていた髪の毛を解いてくれた。

「さあ、リリーナイト、今度は君自身で戦うんだ」

ノギイナイトは百合子を立ち上がらせてそう告げた。

「ノギイナイト様、私の腕輪、壊れてるんです。
 さっきから何度も撫でてるんですけど、
 全く変身できなくなっちゃったんです」

百合子は助けてほしいという想いを込めてそう言い放った。

「違う、これは壊れてなどいない」

ノギイナイトは腕輪を見てそう言った。

「私達の変身グッズが正しく機能しない時、
 それは私達自身の心に問題がある時だ。
 君は人間の強さを『力』だと思っているかもしれないが、
 人間の本当の強さは君の『心』の中にあるんだ」

百合子はハッと気づかされた。


百合子は人の目を見るのが昔から怖かった。
だから人と向かい合わなければならない時、
彼女は相手のこめかみをみてやり過ごしていた。
そうすることで苦手な人間と対峙することができた。


また、百合子は服屋の店員さんに話しかけられるのが苦手だった。
自分の弱い心を見透かされたようにして、
必要のないものまで買わされてしまうことが多いため、
今では洋服の買い物は全部ネット通販で済ませるようになっていた。


「・・・もう気づいただろう。
 人間には変身なんてできないんだ。
 それはただの理想という幻影にすぎない」

ノギイナイトは百合子の頭を撫でながら話を続けた。

「人間はその与えられた姿で生きて行くのだ。
 そこから誰も逃げることはできない。
 もちろん、理想は勇気と希望をくれる。
 そこからエネルギーをもらうことは正しいことだ。
 だが、それにずっとすがり甘えることは間違いだ」

ノギイナイトは百合子の手を取って話を続けた。

「理想の姿にすぐに変身なんてできないのだ。
 だが、人間は成長することはできる。
 種が芽を出してやがて花を咲かせるように。
 だが、努力という水がなくては花は育たない」

百合子は雨で見分けがつかなかったが、
子供が泣いているような顔で話を聞き続けていた。

「そして、その努力の水をやり続けた時、
 そのご褒美として人間は花を咲かせることができる。
 それは誰もが違う花だ、同じ花ではない。
 だが、そこにはそれぞれの美しさがある。
 決して一つの尺度で測ることなんてできないんだ」

ノギイナイトは立ち上がって百合子から離れて歩き出した。
去り際に少し顔を百合子に振り向けて言った。

「君は視聴率の為に戦っているのか?
 それとも・・・?」

そして少し間をおいて最後のセリフを言った。

「いけ、リリーナイト!
 ここからはお前のターンだ!」

ノギイナイトは姿を消してしまった。


・・・

 

百合子は雨に打たれて立ち尽くしていた。
怪人はノギイナイトの紫色の剣を抜いてこちらに向かってきた。


百合子は思い出していた。
自分がなぜヒーローに憧れたのか。

それは、ヒーローみたいに誰かを救いたかったからだ。
自分みたいに弱い人々を助けたかったからだ。
そして自分の中に消えることない理想の姿を描いたのだ。


天候はますます激しさを増し、雷雨となった。
百合子は昔から気持ちが高ぶる時、
不思議と天気が荒れる傾向があった。
それが偶然か必然かはわからないが、
とにかくこの時は雷雨を呼び寄せたのかもしれない。


「どりゃぁぁぁー!」

百合子は武器も何も持たずに怪人に向かって走り出した。
その右手の拳撃は怪人のみぞ落ちにクリーンヒットしたが、
あいにくヘドロでできている怪人には大したダメージにならなかった。

それでも百合子は泣きながらパンチとキックの応酬を浴びせた。
どれもグニャリという感触しかなく、効き目があるようには感じない。
そしてまた百合子は怪人の髪の毛に首を掴まれてしまった。

ギリギリと締め上げる怪人の攻撃になすすべなく、
百合子はヘドロの体の中に飲み込まれていった。



万事休す、と思われたその時。



突然の雷が怪人の頭上から降り注ぎ、
排水溝の盾に向かって落ちた。
そこから怪人の体へ雷撃が伝わり、
そして排水溝の盾は粉々に割れて砕け散った。


そして、ヘドロの体の中から光を放つ姿が見えた。
それは白い衣装を身にまとったリリーナイトの姿だった。

ヘドロから飛び出したはずのリリーナイトの姿は真っ白だった。
あんなにドロドロなはずのヘドロが全く衣装に汚れをつけていない。


「この白い花、決してあなたたちに汚すことはできないわ」


リリーナイトの完全復活だった。
その清らかな美しい姿は雨に打たれても凛として強く咲いていた。

やがて雨が止み始めた。
雲が流れて太陽が顔を出した。
そしてヘドロの怪人は苦しみ始めた。
太陽を浴びるのはどうやら苦手なようだった。


リリーナイトは水も滴る美しさで腰からラッパ形の銃を取り出した。
そしてゆっくりと怪人へ銃口を向けて言い放った。

「リリーホワイト・ウォーター・スプラッシュ!」

リリーナイトに滴る水がその銃口に集まり、
その放たれた水撃は怪人のヘドロを全て綺麗に洗い流してしまった。
怪人「ハイスイコウヘドロマン」は消えていなくなったのであった。


「雨は私に力をくれる、正義の花は強く咲くのよ!」


雨が止み、カッパを脱いだTVカメラマンが見たものは、
リリーナイトが歩いて去っていく百合の花のような美しさだった。
そして、雨上がりの空は透明な色に澄んでいて、
普段の青よりも、さらに一段と純粋な青を映し出していた・・・。


・・・


 

「お姉ちゃん」

百合子が埼玉の実家の縁側で日向ぼっこをしていると、
また松坂くんが百合子を訪ねてやってきた。

百合子はまたバニラアイスを取ってきて彼にあげた。
彼の存在は、もはや一緒に縁側でボーッとする友人のようなものだった。

「お姉ちゃん、この前のTV見たよ」

松坂くんはそっと百合子にそう告げた。


視聴率は過去最高だった。
政治家もお役人も、会社の重役達もみんな喜んでいた。
もうすぐ「ヒーロー特別区」は児玉坂だけではなく、
全国各地に広がりを見せる事でニュース番組は大盛り上がりだった。


「・・・ありがとう。
 ノギイナイト様、かっこよかったでしょ?」


会社側で番組の視聴率を伸ばすため、
重役達がノギイナイトに頼んで出演を依頼したのだった。
そして激務の中で時間を割いてノギイナイトは出演してくれたのだ。
全国の子供達は手を叩いて喜んだ。
色々なヒーロー達の夢の競演ほど面白い番組はない。

だが、今回ノギイナイトは一切のギャラの受け取りを拒否したそうだ。
番組の最後には「友情出演」という欄に名前が乗せられていたらしい。



「・・・うん、でもね」
「何?どうしたの?」

松坂くんは下を向いて恥ずかしそうに言った。

「僕は、お姉ちゃんが一番かっこよかったと思うよ」

会社からの総括は、後半の立ち直りはよかったが、
前半があまりにもひどくて見せられるものではなかった、というものだった。
ノギイナイトが出ていなければ番組は打ち切りだったかもしれなかったと、
百合子は耳が痛いほどのお叱りを受けたのだった。


「・・・ありがとう。
 松坂くんは優しいね」

百合子はニッコリと笑ってそう言った。

「・・・当たり前だよ。
 だってお姉ちゃんは無敵のヒーローなんだから」

百合子は下を向いて悲しそうに何かを思い出していた。

「リリーナイトは無敵で完璧だ。
 弱点なんかないんだよ。
 だから負けるはずなんかないんだ」

松坂くんは誇らしげにそう言って笑った。
百合子はずっと下を向いていた。

「・・・ちがうの!」

百合子は震えた声で言った。
松坂くんは驚いた顔で話を聞いていた。

「・・・お姉ちゃん、本当は全然無敵なんかじゃないの。
 ヘッポコでおっちょこちょいで、泣き虫で、強がりで、
 こんなバニラアイスを食べるのにも10分も20分もかかって、
 頑張って早食いするとすぐにお腹が痛くなって・・・」

百合子は泣きながら震えた声で話を続けた。

「それで、お腹が痛くなるとごめんなさい、ごめんなさいって謝って。
 洗剤で手を洗っただけで手の皮は剥がれちゃうし、
 ドアの角で足の小指は簡単に骨折しちゃうし。
 ・・・それで・・・それで・・・」
 

百合子はいつか児玉坂で出会った泣いていた少年を思い出していた。

(お姉ちゃんはね、無敵の正義のヒーローなんだよ。
 完璧で弱点なんかないんだ、だから君を守ってあげられるよ)

 
あの子は私が戦うTV番組を見ていたのだろうか?
あの日、私は咄嗟に嘘をついたつもりはなかったのだけれど、
結果的に私の言葉はあの子にとって嘘になってしまった。


変身しなければ決して立ち向かえない自分の弱点を攻める怪人に対して、
赤色のリリーナイトに変身してあっさりと倒す姿を見て、
なんて卑怯なヒーローだと思っただろうか?

変身できないで、ボロボロにやられて助けられる姿を見て、
何が無敵のヒーローだと思っただろうか?
この世に希望なんてないと思っただろうか?
大人達はみんな嘘つきだと思っただろうか?


「嘘じゃないよ」

松坂くんは呟いた。
百合子は心を見透かされた気がして驚いた。

「お姉ちゃんは夢と希望を与えたんだよ。
 見てる側だってそんなバカじゃないよ」

松坂くんは空を見て話を続けた。

「学校の先生が言ってたよ。
 『人』に『憂』と書いて『優しい』って書くって。
 悲しいことを知ってる人が本当に『優れた』人だって。
 そして『優れる』は『勝れる』とも書けるって」

松坂くんはニコッと笑った。

「なんかそんな難しいこと言ってたよ。
 僕にはよくわからないけど、
 リリーナイトは勝ったんだよ。
 だからお姉ちゃんは強い人だと思うよ」


こんなに支えてくれる男の子がいてくれて、
百合子はとても幸せだと思った。
自分は視聴率のために戦っているんじゃない。
正義のために、この子達のために戦っているんだ。
そして、そうして続けていく活動を通じて、
結果として多くの人に正義を理解してもらえる。
それでいいのかもしれないと百合子は思った。


「あら〜松坂くん、また来てたの」

縁側に並んで座っていた二人の後ろから百合子の母が呼びかけた。

「この前、松坂くんのお母さんがくれた海苔、とっても美味しかったわよ。
 お母さんによろしく伝えておいてね」

「あっ、いえ」

松坂くんは海苔の話をすると照れくさそうに百合子をチラっと見た。
申し訳ない、とでも言うような表情で。


「あっ、そうそう、百合子、あなた排水溝を掃除してくれたの?
 今朝見たらすごいピカピカになっててびっくりしたわよ。
 そろそろ掃除しなきゃと思ってたところだったけど、
 助かったわ、ありがとうね」

百合子は少し恥ずかしそうな顔で赤くなった。

「そうそう、ドーナツあるからみんなで一緒に食べない?
 あと、松坂くん、あれ百合子に教えてあげてくれる?」

百合子は頭の上にハテナが浮かんだ。
母親はまた自分よりもさらにふわふわした人だったから、
突然また意味不明なことをやりだすのかと思った。

「百合子、たまにしか帰ってこられないから、
 いつも伝えそびれちゃってね。
 松坂くん、よろしくね」

松坂くんは嬉しそうな顔をして百合子の手を引いた。

「お姉ちゃん、こっちこっち!」

手を引かれるままに庭を走っていくと、
もったいぶったように松坂くんはそれを体で隠しながら言った。

「じゃーん!」

そこで百合子が見たものは、
庭の片隅に咲く一輪の大きな白い鉄砲百合の姿だった。


「あっ・・・今年も花を咲かせたのね・・・」


清純無垢なその花は、毎年のように百合子の実家の庭に咲く。
今年咲かせたその白い花も、凛として美しい清らかな姿をしていた。
明るい陽だまりに揺れるその姿からは、どこか柔らかい幸福の香りが漂っていた。

・・・

百合子が生まれた年の夏、誰も種を蒔いていないのに、
どこからか舞い降りた種が、庭の隅にそっと小さな花を咲かせた。
両親はその花に運命を感じ、生まれてくる子供にその花の名前をつけたという。

凛として強く咲くその小さな花のように、愛おしい花を咲かせて欲しいと願いを込めて。


ー終幕ー

あの日私は咄嗟に嘘をついた ー自惚れのあとがきー



校正をしながら読み直して見て驚いたのは、
思った以上に政治色の強い内容だったのだということだった。

この作品は筆者の4作目である。
ヒーローに憧れる気持ちとは何かという疑問を抱き、
それについて考えている間にこの物語を思いついた。

結局、百合子が一番輝いている瞬間はヒーローなのである。
だからこの子を主人公として選んだ以上、この場面を書くしか選択肢はなかったと言ってもいい。
だがそれだけだと浅い喜劇になりかねない気がして、
ヒーロー業界に潜む縦社会や政治的な思惑などを少し織り込むことにして、
社会派的な物語を書こうと思ったのであった。
しかし、読み直してみると、結構その色が強くて驚いたのだ。

今回の作品で一番面白かったのは、調べるということだった。
ヒーローについて無知な筆者が色々と百合子の好みを調べないといけない。
また、鉄砲百合の花についても全く無知であったために、
筆者は思い立って花屋まで鉄砲百合の花を探しに行ったほどだった。

そして、百合子を百合の花のような女性に見立てて書いた。
結局、一番気に入っているのは百合子の実家の庭である。
実家に帰ってほのぼのと球根に栄養を蓄える百合子の場面が、
堅苦しい社会的な話題に比べて清涼な風を吹かせてくれている気がした。
実際に調べれば調べるほど、百合子はまさしく鉄砲百合のような女性だと思ったものだ。

特に縁側で蛍を見る場面はネタ元もない完全なオリジナルなのだが、
縁側にぺたんと座っている美しい百合子と蛍の儚い光の構図が、
筆者は一番気に入っているのである。

書いている最中の気持ちを思い出してみると、
リリーナイトが敵を倒していくシーンは書いていてとても痛快だった。
最後にボロボロになりながら戦っているシーンでさえ、
なんだか書きながら自分自身もハラハラしてしまった。
正直、当初は戦隊ヒーローは幼稚なものかなと甘く見ていたのだが、
実際に調べてみるとなかなか奥深いものだと気付かされたし、
何より書いていて自分がこれほど楽しい気持ちになるものかと驚かされたものだった。
物語を書き進めていく中で、百合子のまっすぐさは筆者の心に清々しいものをくれたし、
時に無邪気に、時に優しく、また自分の弱さと向き合いながら、
一生懸命に生きる健気な彼女のキャラクターにも魅力を感じた。
そして、リリーナイトの戦う姿は筆者の脳裏に鮮やかに焼き付いて離れない。


この作品にはGute Reiseのような深みをもたせているわけではなく、
戦隊モノなのであえて見たままのシンプルな作品にとどめている。
わかりやすく書いてみたけれど、最後の百合子の悲痛な告白や鉄砲百合の花のシーンなど、
やはり何か胸にくるものがあるのは筆者だけなのだろうか。
書き終えた直後、筆者はリリーナイトの物語が終わってしまった事に、
なんだかとても寂しい気持ちがしてしまったのをまだ覚えている。

ちなみに赤い百合の花の花言葉は「虚栄心」である。
白い百合の花の花言葉は「純潔、威厳」である。

何も知らないところから、花言葉まで色々と研究してしまったのだった。
色々と新しい刺激をくれた百合子に感謝感激である。


ー終わりー